明治二十年に建てられた建築を改修して造られたGallery 一初は、当時の使用人の赴きを残しながらそれらを紡ぐように設計された。この建築に選ばれた一本一本の木材からは、日本の技術力の高さを物語っている。
風との関係性が深い私たちは、周辺環境や空間内の空気の流れを理解していくことから香建築の設計を始める。本展で、お客様を迎えるのは特別に製作されたオイルバーナーだ。この建物特有の上昇気流を受けて、エントランス空間がそっと香りを纏う。また、そのちょうど真上、中空に浮遊させたモビールは、常に回転を続け、気流を可視化する象徴的なオブジェクトだ。
更に、周辺環境の植生リサーチ、水系から得た情報を空間に運び、“外と中“の意識に変革を起こす。空間に置かれた石は、庭や周辺にあったもの。それらを磨き、生命を吹き込むかのように配置をする。建物の外に設えられた石との繋がりから、建築と自然の境目に無の存在を見出す行為。"見立て"とは、そこにあるはずのない情景を想像する事である。
古語にある「あはれ」とはしみじみと趣きのある美しさを感じる心の余白。
私たちが古来より感じてきた「あはれ」とは。
AHAREは、香りを用いて建築を設計する。
